本物の海賊....
柄にもなく「パイレーツ・オブ・カリビアン3」が気
になる....。
ハリウッド・ムービーでしかもディズニー製作なんて
時点で自分のストライクゾーンからは思いっきり外れ
まくってるし、挙句に製作のビル・ブラッカイマーは
(あらすじ聞いただけでも100%クソ映画だと分かる)
「パール・ハーバー」の制作者じゃん。今回紹介する
「超ビッグ・ネームの誰かさん」の言葉を拝借すれば
さしずめ「そんな映画見せられるなんてゾッとする」
ってところっす。
そんな管理人が何でこんな映画を気にするかっつうと
ひとえに
「超ビッグネームの誰かさん
= キース・リチャーズ」
の一点に尽きるんだよなぁ。
こんな写真がネットに載せられた日には......
最初ネット上で「キース、ワールド・エンドに出演」
のニュースを見た時、ディズニー映画とストーンズの
余りにミスマッチな組み合わせ(→「パイレーツ〜」
なんて英語で言ってみたところで、「カリブの海賊」
なんて、ディズニーランドでもあんまり人気なかった
アトラクションじゃなかったっけ?)に違和感を感じ
さらに「キース、変に人間が丸くなっちゃったんじゃ
ない?ミックみたいな変な商売っ気を出しちゃったの
かなぁ....」などと少し不安になったもんでした。
でもね、
とか
なんて記事を読んで、この人何にも変わってないわと
正直安心した。キースの唯我独尊の暴君ぶりに真っ青
のゴア・ヴァービンスキー(監督)やブラッカイマー
といったスタッフ連中の絵が浮かんで見えて、思わず
微笑ましくなってしまう。
「シラフの奴が必要なら呼んだ相手が間違ってるぜ」
ってキースの言葉は、たぶん「たかが映画屋風情が俺
を意のままに扱おうだなんて思うなよ」というこの人
一流の先制攻撃だね。「喧嘩は先手必勝」という不良
の世界に留まらない鉄則をキースも当然に心得ている
んだと思う。
思えばあの「ヤシの木転落事件」だって、下手したら
キースがヴァービンスキーに無意識の内に釘刺してた
のかも。さすがにそりゃ考え過ぎかな?
キースが書いた曲に「You don't move me」という曲
がありまして、管理人が大好きな曲なんですが歌詞を
ここで紹介してみようと思います。
(歌詞)
You made the wrong motion
drank the wrong potion
You lost the feeling, not so appealing
Why do you think you got no friends
you drove them around the bend
You don't move me any more
Now you want to roll the dice
You already crapped out twice
You just don't move me any more
One face so seamy, the other don't see me
It's better to kill the light
You're giving us all a fright
You just don't move me any more
How you going to keep your wealth
Can't even defend yourself
Oh yes oh no you just don't move me any more
What makes you so greedy, makes you so seedy
No matter how you flip that dime
all outside is the same
It's no longer funny, it's bigger than money
You just don't move me any more
(管理人意訳)
お前は合図を間違えた
キメるべき一服を間違えたんだ
お前は感情を失くしたんだ 心に訴えかけないよ
何で自分に味方が居ないなんて思い込むんだ?
あいつらを怒らせたのはお前自身だよ
お前の意のままに動く俺じゃない
今更になってサイコロを振りたがるお前だけど
もう二度も機会をぶち壊しにしてるんだぜ
お前なんかの意のままになる俺じゃない
一方の顔はさもしく、もう一方の顔は俺を見ない
明かりを消した方が良い
お前は俺達みんなをゾッとさせてるんだよ
お前なんかの意のままになる俺じゃない
どうやって自分の富を守る積りなんだ?
自分自身さえも守れっこないぜ
お前なんかの意のままになる俺じゃない
何がお前を強欲で、器の小さい奴にさせてるんだ?
いくらお前がコインをひっくり返した所で
外の世界は何も変わりゃしないんだ
もう笑い事じゃ済まない カネより大きな問題
お前なんかの意のままになる俺じゃない
You don't move me, お前に俺は御せないぜ。
誰にも屈従せず、誰の指図も受けず、己れの信念・
価値観を貫き通して生き抜く。そんなキースの行動
原理なり哲学を最も端的に表現したのがこの歌詞だ
と思う。さらに言えば、狂気じみたまでのロックン
ロール・ライフの中でもそうした哲学・美学を守り
続け、ミュージシャンとして40年以上の長きを生
き抜いた事こそキースの凄味の根源だ。
ところでこの曲、実はストーンズが解散の危機に瀕
していた(注1)当時において、キースがミック・
ジャガーに寄せた痛烈なメッセージである。
かの天下のミック相手にかくも辛辣な言葉を浴びせ
られるのは恐らくはキースだけだろうし(→それと
「ミックをブン殴れる人間」という事なら、たぶん
そこにチャーリー・ワッツ(注2)を加えてもOK)
さらに言えば、世界有数のセックス・シンボルたる
ミックをネタにし、かくもサイテーかつ爆笑ものの
ジョークを言って許されるのは確実にキースだけだ
(あのモンティ・パイソンだって、ミックをネタに
使ってここまでヒドい下ネタは飛ばせるかなぁ....)。
尊大で気紛れ、多情かつ癇癪持ち、頭がキレて人を
挑発するのが大好き。そんなパブリック・イメージ
を作り上げ(→虚像が一人歩きしている所ももしか
したら有るかもしれないが....)、レオニアンの典型
像を地で行く(→星座占いに科学的根拠はないんだ
けどね)ミック・ジャガーという人は、恐らく自分
以外の全ての人間を跪かせなければ気が済まない様
な人間だ。
そんなショウビズ界でも有数に面倒臭くて扱い難い
であろう人間を相手に、「お前に俺は御せないぜ」
と啖呵を切り、時には傷だらけになりつつ野性の猿
の首根っこを押さえ込み殴りつける猿回し(→以前
にテレビで猿回しの調教の様子を見たことがあるの
ですが、正直目を背けたくなるような苛烈なシーン
でした)のような思いをしてバンドにつなぎ留め、
ローリング・ストーンズという看板を40年の長き
をかけてポピュラー・ミュージックの世界で最大の
バンドに育て上げる。そんな仕事はそれこそ途方も
なく難儀な代物だろう。
そんな芸当は、ジョン・レノンが倒れた夜(80年12
月8日)に「殺ったのはどこのどいつだ!」と怒り
狂い、スミス&ウェッソン製の拳銃を片手に一晩中
ニューヨークを駆け回ったような狂おしささえも秘
めた荒ぶる魂と、過酷なロード生活とアルコールに
留まらずヘロインそしてコカインといったハード・
ドラッグの過剰摂取にまで身を晒し、それでもなお
60余年を生き長らえるほどに強靱な肉体と神経(→
これって考えてみたら梶原一騎以上のタフネスだよ
たぶん)の持ち主でなければ、とても勤まりはしな
かったはずだ。
(ニューヨークでのキースの一件についてはこちら
のページを参考にさせていただきました。)
なんだか誰もが分かりきってる事をグダグダと書き
連ねてしまってる様な感じがして、ここまで書いて
気恥ずかしい気分だったりするんだけど、つまりは
常人の及びもつかない尺度や力学の世界の中で苛烈
な人生を送り、それでもなお己を見失わず「個人と
しての誇り」を守り抜いてきた、そんなケタ外れな
人間なのだキース・リチャーズという人は。どだい
しがない映画屋が軽々しく手なずけられる人間では
ないってば。
そんなケタ外れな人間を、たかだかディズニー風情
が引っ張り出すなとまでは言わない。でも使うので
あればそれなりの「畏れ」がなければダメだろう。
単なる「恐れ」ではなく「畏れ」である。恐怖の中
に確たる敬意が無ければダメなのだ。
キースを単に金儲けのダシに使おうとするふざけた
了見の持ち主は、とんでもない祟り神に遭う羽目に
なるんだろうな、きっと。(こちらのページに書か
れていますが、まさに「海賊映画にホンモノの海賊
を使っちゃいけません」という事です。あはは)
キースの「息子の友達」ことジョニー・デップは、
その辺りを一応は心得ていたようだ。ローリング・
ストーン誌の最新刊でのキース×ジョニーの対談で
キース曰く
「『パイレーツ1』の撮影に入る前に、ジョニーが
電話をよこしてきて“あなたにお知らせしなければ
ならないことが....今度のキャラクター(ジャック・
スパロウ)を演じるのに、あなたを参考にしました”
と言ったんだ。
よくぞ知らせてくれた。ありがとう、ジョニー。
別の方法だったら、お前のケツに見舞ってやる所
だった」
期待を裏切らない実にキースらしいコメントだ。
全くもって最高である。
(注1)
80年代後半のストーンズは解散説がしばしば音楽誌
上に流れるような不穏な状況だった訳ですが、その
発端となったのはミック・ジャガーのソロ活動。
ミックは80年代に「She's the boss」(85年)と
「Primitive cool」(87年)の2枚のソロを発表
しますが、この事がストーンズ本体の活動に支障を
及ぼすようになります。
特にストーンズがアルバム「Dirty work」(86年)
を発表した際、キースがアルバム発売に伴うツアー
活動を強く希望するのをよそにミックは「Primitive
cool」の製作を開始し、ツアー計画は頓挫。これに
よりキースとミックの対立は「解散秒読み」と言わ
れるまでに激化しました。
「You don't move me」の歌詞に出て来る「お前は
もう二度も機会をぶち壊しにしたんだ(You already
crapped out twice)」という一節は明らかにこの
辺りの事情を指しています。
(なお、上記の背景事情については越谷政義氏に
よる「Dirty work」(94年再発版)のライナー
ノーツを参考にしました。)
(注2)
ストーンズの全メンバー中で唯一離婚歴がなく、
一番常識人らしい風貌をしたチャーリーですが、
アルバム「Steel Wheels」(89年)発売に伴う
ツアーの際、自分を「My little drummer boy」
(俺のかわいいドラマーの坊や)とおちょくった
ミックを「二度と俺をドラマー・ボーイなんぞと
呼ぶな!」と殴り倒したというなかなかに痛快な
武勇伝を残してます。ブン殴られたミックの方は
「ストーンズのドラムは仕込めばサルでも叩ける
ぜ!」と減らず口を叩いたそうですが、キースの
「やめなよミック、クールじゃねえ」の一言に二
の句が告げなくなったそうな......
最後にアルバムを1枚御紹介します。
「Talk is cheap」/Keith Richards
売れっ子セッション・ドラマーであるスティーヴ
・ジョーダンをパートナー(共同プロデュース)
に迎えて製作されたキースの1stソロ・アルバム
(88年)。今回歌詞を紹介した「You don't move
me」も収録されています。
まるで時計の針のような正確さで2拍4拍に高い
ピッチのスネアをビシバシ叩き込むスティーヴの
ドラムスはチャーリー・ワッツのそれをも彷佛と
させる痛快なサウンド。それに絡みつくキースの
ザックリとしたギターも生き生きと響いてきて、
聴いててホントに気持ち良い。
2曲目「Take it so hard」やラスト「It means
a lot」の正調キース節と呼ぶべき絶妙なルーズ
さ加減、6曲目「You don't move me」での火を
吐くようなアグレッシヴさ、それに7曲目「How
I wish」の突き抜けた高揚感などなど、ロックン
ロールのエッセンスをストーンズ以上の高濃度で
蒸留・抽出したような極上の8ビート・ナンバー
がズラリ目白押しです。
その一方、スティーヴはじめ辣腕ミュージシャン
達のサポートを得て、キースが黒人音楽・ルーツ
ミュージックに対して抱く愛情なり敬意といった
ものを恐らく本人の予想さえも上回る高いレベル
で形にできた点もこのアルバムの大きな魅力だと
思う。
5曲目「Make no mistake」での高級感さえ感じ
させる芳醇なR&Bサウンドは、恐らくストーンズ
で表現するのは難しいだろうし、オープニング曲
の「Big enough」に至っては何と正調ファンク。
ブーツィ・コリンズ、バーニー・ウォーレルさら
にはメイシオ・パーカーといったPファンクの重鎮
を招き入れ、ストレート・アヘッドなファンクに
キースが真っ向から挑んだ痛快なナンバーです。
キースの渋荒なカッティング・ギターとブーツィ
のコテコテなスペース・ベースの絡みは、カツオ
の刺身とマヨネーズの組合わせを思わせる(笑)
意外な相性の良さ。
どちらかと言えばビートルズ派であって根負いの
ストーンズ・ファンではない管理人も、この作品
にはドップリとハマって一時期馬鹿みたいに聴き
まくってました。今聴いても本当に飽きが来ない
アルバムです(ちなみにキースからこのアルバム
を聴かされたミック、ちょっとマヌケだけど素敵
なエピソードを残してます。詳しい内容はこちら
のページに紹介されていますが、このエピソード
こそこの作品の素晴らしさの最高の証明かも)。
という訳で「パイレーツ・オブ・カリビアン3」
を観て「キャプテン・ティーグ・スパロウの正体
ってどんな人?」と興味を持たれた方に。悪い事
は言わないからすぐにタワー・レコードなりHMV
なりにゴー!でもってこのCDを是非ゲットして!
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